なぜメルカリは兄弟アプリ戦術を取っているか
メルカリが、本特化のカウルに引き続き、ブランド品特化の兄弟アプリをリリースしました。
いわゆる「あらゆる中古買取屋」の市場を(拡大させながら)ディスラプトさせていく動きかと思いますが、今回は「セグメント特化の兄弟アプリ製造」の戦術について、
- なぜメルカリは兄弟アプリ戦術を取っているか
について考えてみようと思います。
なぜメルカリは兄弟アプリ戦略を取っているか
一言で言えば、「アプリの機能を特定セグメント課題を持つ、採算の合う高LTVユーザー向けに最適化して切り出した方がGMVが伸び、それを競合より早めに行って囲い込みを図りたいから」からだと考えます。
両アプリ共通
- どう転んでも、メルカリ本体の出品数が増えるため、GMV増加が見込める。
- ヤマト、ゆうパックなど、メルカリで整えた発送以降のインフラを最大限、活用可能。
- 実態として、インターフェイスが異なるだけで、「出品・取引成立・発送」の行動はメルカリと差異がない。
- セグメント特化の切り口で、メルカリでは取れなかった特定セグメントをメルカリ経済圏に取り込むことによるGMVのさらなる増加・ユーザーの購買/興味データの取得による将来的なマーケット独占。
- 20代後半〜30代の男性ユーザーや、比較的裕福な40代以降のミドル/シニア層あたりをまだがっつりは取り込めてなさそう。
メルカリカウル
なぜ
- 最低でも、「ブックオフ」の流通相当のGMVが狙える市場。
- かつ、高LTVなユーザー獲得/セグメント特化の興味/購買データが手に入る。
- ユーザー積み上げによるGMV増加
- 総じて「本を日常的に買う人」が全体的なターゲットといえる。
- その中でも、これまでメルカリでリーチ出来てなかった(ように感じる)「本好きの男性ビジネスマン」の取り込みを狙いそうに感じた。
- メルカリ経済圏での新規UU獲得。
- 特徴とひてビジネス書など書籍市場内で高単価な商材を読み、学習意欲が高く、またビジネス書を買いたくなりがち。
- そのため、本が家に溜まりがちだが、ブックオフも面倒。ただ、新しい本も買いたいので、「手軽に要らない本を売り出して安く買える」体験を提供したいのかなと感じた。
- UU単位でニーズをデータから引き出し、買い手側へのレコメンド/売り手側のプライシングを将来的にサポートでき、競合優位性確保によるさらなるGMV増加が見込める。
- ユーザー積み上げによるGMV増加
どうやって
- まずは「本の出品を楽にする課題」から解消。
- ブックオフまで行くのは面倒だし、普通のフリマアプリでもわざわざ写真・データ入力は面倒。
- 古本探しをしているユーザーは「どんな本か」が分かれば良いので、DBで入力ショートカットし、情報を均質化。
- 情報が均質化されているので、あとは「本をまた買いたくなるような設計(レコメンドなど)」をすれば、獲得ユーザーの中で売買の循環が回る。
メルカリ メゾンズ
なぜ
- 最低でも、「大黒屋」や「なんぼや」の流通相当のGMVが狙える市場。
- 大黒屋の売上が、ブランド品以外の額面も含むが、直近で200億円強
- 質を展開していることに加え、ブランドオフ買収、直近の中国での複合ブランドショップの展開など、ブランド品の中古買取・質に力を入れてる。
- 同じくブランド品を主として扱う「なんぼや」も売上200億円程度。
- ざっくり合わせると約300〜400億円くらいのGMVを確保できる。
- 大黒屋の売上が、ブランド品以外の額面も含むが、直近で200億円強
- かつ、1トランザクションあたりが高単価で、年間売買回数が高そうな上記店舗の常連をコアユーザーに抱えられるとGMV安定。
- 質屋・ブランド中古品のメイン利用者は不明だが、「経済力」を考えると銀座・日本橋あたりにいそうな(偏見)、ミドル・シニア層が多そうなイメージ。
- アプリのバッグの売り出しなどを見ても、シニア女性を狙ったカテゴリ紹介・品揃え感が強い。
どうやって
- こちらも「出品を楽に、売れるように」しつつ、「安全に買える」課題解決アプローチ。
上記、あくまで私見ではありますが、プラットフォーム/エコシステムを作る上では確からしい戦術かと感じました、
ただ、高LTVなカスタマーを囲ってトランザクションを増やせる一方、開発投資や集客投資の分散などのデメリットも当然生じます。
そのため、次回は、「投資分散も発生する中で、どういう事業の場合、兄弟アプリ戦術は最適になるか」について整理してみようと思います。